教師の労働環境はブラック?
"教師ってブラックだよね?"と聞かれることがよくある。
実際、多くの人にとって学校現場はブラックな労働環境と写っているのだろう。
だが、学校現場で働いている教員はどのように考えているのだろう?
私は、一般企業からの転職で教員としてのキャリアを始めている。
日系と外資系企業を1社ずつに加え、私立を含む高校と中学校で勤務した経験を踏まえて、教員という職業を私なりに考えてみたい。
もちろん企業の労働環境は大きく差があることは理解している。
同じように学校の労働環境も、学校ごとや学年で組む他の先生との相性により差があることも了承いただきたい。
これから教師を目指すことを考えている学生や学校現場への転職を考えている方へ参考となれば幸いだ。
1.私の考える教師という職業
最初に、私が教師という職業をブラックと考えているかをはっきりさせておきたい。
私は、教師という仕事はブラックではないと考えている。
もし、過去に戻り、就職先を選び直すことができたとしても、今と同じく教師の道を選択している。
一般企業で勤務していた日々と比べて、私自身は毎日が充実していると感じているからだ。
ただし、企業での勤務を経験後、学校現場へ転職したことは全く無駄であったとは思っていない。
まず、なぜ教師がブラックと広く思われるのか。
勤務内容や労働環境が企業勤務と大きく異なるからだろう。
教師という仕事は、例え非常勤講師であれ、授業以外の業務も多い。
非常に体力を使う。
加えて、相手は未成年の生徒であり、精神的に成長段階。
昨日と今日で全く違う人物かのように感じることもあり、言葉のキャッチボールが思うようにできないこともある。
また、担任を持てば、突然の保護者対応もあり、予定外の勤務が入ってくることは日常茶飯事。
基本は毎日のスケジュールは自分の考えたようにはいかない。
昼食中に、体調不良になった生徒が出たため、保健室に連れて行き、保護者の迎えの電話をしていたら昼食を食べ損ねるようなこともある。
無事昼食を食べることができても、昼休みなど存在しない。
昼休みは生徒と個人的な話や安全確認の立ち番もある。
確かに労働環境は決して良いとは言えないかもしれない。
だが、他者が考える”労働環境の悪さ”は"ブラック"と結びつくのだろうか。
2."ブラック"の定義
よく”ブラック”という言葉を耳にするが、そもそも”ブラック”の定義とは何だろう?
労働環境に一定の基準を設けてブラックと定義する人もいるだろう。
私は、ブラックの定義は"自分がその仕事を好きか?"で違ってくると考えている。
労働環境は一般企業の方がいいと言う人も多数いるだろう。
一般的に企業では、
・昼休みが有り、昼食をとる時間もある。
・顧客からの急な問い合わせ対応が必要なこともあるが、ある程度、自分のスケジュールもコントロールできる。
それでも私は、教師という職業が好きだし、誇りを持って勤務している。
逆に、一般企業で過ごした日々の幸福度は今より低かったと感じている。
なぜなら、"その仕事を好きでしているのではなかった"からだ。
正社員として働く場合、睡眠時間を除き、半分以上の時間を仕事に費やす。
その仕事が好きでなければ、仕事に誇りやモチベーションをもてるだろうか?
勤務をする時間は苦痛となるのではないだろうか?
好きでもなく、向上心を持てない仕事は、徐々に仕事内容の粗探しにもつながっていくのではないかと思う。
仕事に不満を持ち、毎日不平を言うサラリーマンは少なくないだろう。
私も以前はその一人であった。
極端な例ではあるが、
もし"休憩なしの12時間労働"
と言われれば多くの人が絶句するだろう。
では、本やゲームなどの好きなことであればどうだろう?
睡眠や休憩なしでも徹夜してまったような経験はないだろうか?
結局は、本人が仕事をどのように考えているかに凝縮されるのではないだろうか。
3.教師の仕事へのモチベーションは高い
最近、教師の不祥事に関するニュースが目にすることが増えたように思う。
日本には、そのような教師がいるのも事実だろう。
だが、教師の大半は心から生徒が好きで、仕事に誇りを持っていると私は感じていることを伝えたい。
企業で勤務をしていた時、勤務内容について愚痴を言っているのをよく耳にした。
また、飲みにいけば最初から最後まで不平を言っている人もいた。
思い返せば、自分もその一人だったのだと思う。
しかし、学校現場に転職してから、仕事内容に不平を聞いたり、自分が不満を言う頻度が明らかに少なくなった。
やはり仕事である以上、愚痴を言うことは確かにある。
心ない言葉を生徒等から言われたりもするため、文句の1つも言いたい時もある。
だが、
”生徒が楽しく、安全に学校を送るにはどうすれば良いか”
”生徒のためにできることは何だろうか”
を大半の教師が考えて、日々職務にあたっていると思う。
教師という職業を選択し、人のお世話やサポートすることを職にすると決めた人たちの集まりだ。
教師どうしで愚痴を言うことがあったとしても、最終的には、”次は◯◯してみようと思います”と言った前向きな会話に終わっていることが多い。
”教師は常識のない人が多い”
たしかに否定しきれない部分もあるだろう。
だが、自らの仕事に誇りを持つ面は、逆に企業に属し、日々不平を言い続けているサラリーマンは見習うべき点ではないだろうか。
自分の職務に誇りを持っている人たちと働くことができるという意味でも教師の労働環境は決して悪いとは言い切れない。
4. 教師という仕事が好きか?
繰り返しとなるが、
"子供や生徒が好きか?"
"教師という仕事を楽しそうと思うか?"
"生徒と何か目標に向かって進むことが好きか?"
という質問に自分がどのように答えるで教師という仕事をブラックと感じるか変わると思う。
たしかに教師の労働環境は一般企業では受け入れ難い側面もある。
だが、それは学校から見た企業も同じであり、辛い側面は必ず一定数はあるはずだ。
営利団体の勤務は利益を追求しなければならない。
故に、学校以上に辛いことや顧客からの理不尽に対応しなければならない場面が沢山あるだろうと自身の経験から考えている。
反対に学校での勤務は、売り上げなど数字から感じるストレスからは皆無だ。
どちらにも良し悪しがあり、向き不向きもある。
加えて
"営利の労働環境" vs "非営利の労働環境"
の構造で同じ土俵で比べることがそもそも難しいのではないかとも考えている。
辛いことがない仕事などない。
今日では、保護者からの理不尽な要求があると話を聞くこともあるだろう。
だが、それは一般企業でも理不尽なクレームがあるのと同じではないか。
一側面だけでブラックや過酷な労働環境と判断するのではなく、自分が教師という仕事にやりがいを感じそうかどうかで判断して欲しい。
•生徒と行事に参加し、一緒に成長したい
•未来の日本を背負っていくであろう子供たちに何か自分が貢献できることはないか
という気持ちがあればそれで十分なのではないかと私は思う。
〜まとめ〜
教師の労働環境は決して楽なものではない。
だが、ブラックとまとめてしまうのは少し違うと私が学校現場での勤務を始めて感じたことだ。
学校現場の勤務は、一般企業勤務にない利点もたくさんある。
例えば、3年に1回は必ず生徒から感動をもらえる。
1年生から担当し、その生徒たちを卒業式で送り出すのはなんとも言えない感動をもらえる。
どれだけ辛い時期が瞬間的にあったとしても、教師として勤務してよかったなと思え、涙も流せる。
また、自分の専攻科目を使って仕事もできる。
私自身、大好きな英語を使って仕事ができることに喜びを感じている。
授業準備や生徒からの質問を通じて、新しく学ぶことも多数あり、日々発見何か発見がある。
もし、今学校現場で働くことを考えているのであれば、ブラックか否かの一部の批判的な視点で躊躇するのは待ってほしい。
いざ、学校現場に入ってみれば、
"この仕事でよかった"
"一般企業勤務の時より毎日が楽しい"
と思える可能性は十分にあると私は思う。
また少し余談となるが、一般企業の経験は今の勤務に本当に役立っていると思う。
保護者へのメール送付や電話対応、生徒とのやりとりは企業で顧客対応で鍛えられた経験が本当に活きている。
また生徒に将来働くことを意識させた話をする時も役立つ。
生身の声なので、生徒たちにもよく声が届いているようにも感じる。
一般企業勤務からの学校現場への転職は、経験値的なところで遅れをとるかもしれないが、それを十分に補う経験となる。
また授業スキルは時間と共に解決できるが、企業経験は時間では解決できないのだ。
〜補足〜
誤解の無いよう少し話を付け加えておきたい。
少し触れたが、職場での雰囲気や考え方などは、学校によって大きくことなる。
上記はあくまで、私が勤務した学校での経験に基づく感想だ。
もし、教師としてのキャリアを考えるのであれば、検討している学校等の情報は可能な限り集めて判断して欲しい。
同じ公立校でも市が変われば大きく異なる。
企業と同じで、教師という職業でも勤務する学校によって日々の勤務満足度は大きく変わると思う。
まず私立なのか公立なのかが最初の別れ道だろう。
それぞれメリット•デメリットはあるので是非整理して考えてみてほしい。
何も情報がないのであれば、非常勤から勤務を始めてみるのも1つだろう。
非常勤と聞くと、収入が不安定なイメージがあるかもしれないが、そういうわけではない。
これは各学校の勤務規定等による可能性もあるので是非確認してみてほしい。
※私の場合は、契約期間中(1年度)は体調不良等で勤務不可能な状況とならない限り、一定の収入は約束されていた。給与携帯や契約内容を交渉したとかではない。